米国特許法で最も重要な単語とは?(その2)
***米国特許法で最も重要な単語とは?(その1)の続き***
彼は「もっとも重要な単語は『unless』だ」と教えてくれた。「unless」は、102条の最初の行に、
「A person shall be entitled to a patent unless」のかたちで登場する。
彼曰く、ここが「if」ではなく「unless」であることが重要なのだという。
つまり「何人(なんぴと)も特許が与えられる」のが原則(デフォルト)であって、「unless」の場合だと、列挙された条件に該当しない限り特許が与えられる。
一方、「if」の場合は列挙された条件(現行の列挙項目を否定形に変えたもの)すべてを満たした場合のみ特許が与えられることになる。
「if」で規定されていた場合、何もしないと特許が与えられないので、その挙証責任は出願人側が持つことになるが、否定形で規定された条件が満たされていることの立証、つまり「・・・が無い」「・・・していない」ことの立証は事実上不可能なことが多い。
一方、「unless」で規定されていると、何もしないと(無審査で)特許を与えないといけないので特許庁(審査官)が立証責任を負う。こちらは無いことの立証ではなく1つでもあることの立証でよい。しかしながら、それが不完全であれば特許を与えるべきなのである。
出願人は特許性があることの立証責任が自分側にあるかのごとく、発明の効果等を懸命に主張することがある。しかし上述の概念を踏まえれば、出願人は特許性があることを立証する必要はなく、審査官の立証の不完全さを主張するだけでよいのである。
権利化に懸命になるあまり、発明の効果等を主張しすぎると、将来、権利範囲の解釈において、広い解釈を妨げるエストッペル(禁反言)としてはたらくリスクがあることも考えると、権利取得の手続きでは、あくまで審査官の主張の不備をつくことに専念すべきだ、というのが彼の教えだった。
次回は日本の場合について書きます。(続く)