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タイトルをご覧になって、「またピケティか」とか「まだピケティか」と思われたかもしれませんが、そのとおりです。
でも、さすがに今さらr>gの内容については書きません。
筑摩書房の『ちくま』4月号で斎藤美奈子さんは、
「今さらながら、トマ・ピケティ『21世紀の資本』の件である。(中略) アンチョコ本は次々出る、論壇誌や経済誌は特集を組む、著者自身も講演やインタビューや対談に出ずっぱり。事態はすでに社会現象化しつつある。情報がここまでジャブジャブだと、もはや普通に読んで書評するって感じじゃないですね(後略)」と書いています。そして、これまでに出されたピケティ本(雑誌での特集も含む)のポイントをコンパクトにまとめています。
ピケティの原著やピケティ本を一冊も読んでいなくても、彼女のこの記事を一読しておくと、さもいろいろ読んだかのように、ピケティ談義に加わることができるでしょう。
一方、『ちくま』5月号では、橋本治さんが、
「トマ・ピケティの『21世紀の資本』が話題になっていますが、――― と言いはしても、それは時候の挨拶程度のことで、私はその大著を読んでいません。「どうせ俺なんかにわかるはずもない」と思って読むつもりもありませんが・・・(後略)」と正直なところを述べています。
橋本さんは、2004年に『上司は思いつきでものを言う』(集英社新書)という、世の中の“上司”たちがドキッとするタイトルの本をヒットさせた作家です。問題の本質を捉えて、ある意味、“それを言っちゃ身もふたもない”感じの意見をズバッとお出しになる方です。
上記の『ちくま』の記事で彼は、ピケティ本の多くが「ピケティの理論は世界を救えるのか」という問いを論じている点を挙げ、「世界は均一ではないのだから一つの理論で救えるなんてことはないだろう」という疑問を投げかけています。
さて、ピケティへの世間の反応はこれくらいにしておきます。
ところで不等式r>gは変数2つの間に不等号があるだけの、これ以上シンプルになり得ない数式です。
とはいえ、世の中の経済活動が「どっちが得か?」という判断(経済学では得か損かといった品の無い言葉ではなく、どちらが合理的選択か、という言葉を用いるのかもしれませんが)で行われているとするならば、ビジネスにおける選択は常に1つの不等式であらわされる判断でなされているということになります。
次回からは不等式を切り口に、これまでのコラムのネタも絡めながら「三題噺」のような筋立てで書くことにします。
以上