【関西だより】文楽『本朝廿四孝』 ~もふもふ白狐も登場
日本の伝統芸能の一つ「人形浄瑠璃文楽」は、江戸時代に大阪で生まれました。大阪の玄関口である新大阪駅の構内に、文楽人形が飾られていることにお気づきの方も多いことでしょう。
文楽は、物語や登場人物のセリフを語る「太夫」、場面の天候や自然などの情景や登場人物の心情を奏でる「三味線」、そして「人形」が三位一体となった総合芸術といわれています。その日本独自の芸能・文楽を観劇できる場所「国立文楽劇場」は、1984年(昭和59年)に日本橋に設立され、このたび開場40周年を迎えました。
国立文楽劇場『令和7年初春文楽公演』
<演目>
第1部 新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
座摩社の段/野崎村の段
第2部 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
八段目 道行旅路の嫁入 /九段目 雪転しの段・山科閑居の段
第3部 本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
道行似合の女夫丸/景勝上使の段/鉄砲渡しの段/十種香の段/奥庭狐火の段
今回は、第3部『本朝廿四孝』を観劇してきました。
日本橋駅の出口を出ると、すぐに「国立文楽劇場」が見えてきます。年始の公演のため、舞台正面の定式幕の上部に干支が書かれた額と「にらみ鯛」が掲げられていました。
舞台に向かって右側には、「床(ゆか)」とよばれる場所があり、太夫と三味線がこちらに座って演奏します。(下の写真では、舞台側の太夫が座る場所に見台(けんだい)が置かれているのが確認できます。)
八重垣姫
「十種香の段」では、八重垣姫が(許嫁の武田勝頼の)絵姿に向かって十種類の香をたいて供養をしている場面から始まります。後ろ姿で座っており、客席には顔を見せていないのですが、袖づかいなどのさりげない仕草から、勝頼に対するお姫様のひたむきな想いが伝わってくることに驚きました。
続いての「奥庭狐火の段」では、勝頼に危機を知らせるため、八重垣姫が家宝の兜へ祈っていると、神の使いである白キツネが現れる場面が見どころとなっています。白キツネの登場と、お姫様の赤い振袖から白い衣装への早変わり、そして、太夫の語り・三味線の音色と一体となった、八重垣姫の躍動感ある踊りに引き込まれました。
文楽劇場のイヤホンガイド、「ワンコイン文楽」
劇場内では、舞台の進行に合わせて、あらすじや見どころを解説してくれるイヤホンガイドの貸出もあります。また、劇場1階には、文楽に関する資料・収蔵品が公開された「資料展示室」もあり、公演チケットをお持ちでない方も無料で入場できます。
<ワンコイン文楽>
文楽に触れたことがない若い方を対象に(*)、通常料金5,500円の国立文楽劇場の文楽本公演を、たった500円のワンコインで鑑賞できる「ワンコイン文楽」のイベントも開催されています。 (*)近畿圏在住・在勤・在学の15歳から35歳までの方が対象です。
今年度は終了しましたが、2025年度も開催予定とのことです。興味をもたれた方は、ぜひ「公益財団法人 文楽協会」サイトをご確認ください。
◆国立文楽劇場 〒542-0073 大阪府大阪市中央区日本橋1-12-10
1体の人形を3人で操る -重さ10kgの人形を動かすには
文楽の人形は大きさ約130~150cmほどで、人形に着物を着つけるため、重さは約3kgから10kgを超える場合もあるそうです。その人形を主に左手で支え、太夫が語るセリフや三味線の音色に合わせて操ります。
【三人遣い】
文楽では人形を操ることを「遣う(つかう)」といいます。人形のかしらと右手を遣う「主遣い(おもづかい)」、左手を遣う「左遣い(ひだりづかい)」、足を遣う「足遣い(あしづかい)」の3人で1体の人形を遣います。より人間らしい動き、より豊かな表現を追究するなかでこのような遣い方が生まれました。
【人形を遣う】
・主遣い:
かしら(人形のあたま)と人形の右手を担当します。10kgを超える人形を左手で支え、左遣い・足遣いの2人に指示を出し、人形を動かす中心となる役割です。舞台下駄(ぶたいげた)と呼ばれる20~50cmほどの高い下駄をはいています。
・左遣い:
人形の左手を担当します。また、人形が使う小道具の出し入れをしたり、演技中に人形の衣装を整えたりします。
・足遣い:
人形の足を担当します。また、人形の足の演技に合わせて足拍子を踏むこともあります。
主遣いは紋付の着付(きつけ)と袴(はかま)を着けて舞台に立ちます。左遣い、足遣いは「黒衣(くろご)」と「頭巾(ずきん)」の衣装を着ており、伝統芸能の舞台上では、黒は「見えない」という約束事があり、黒衣も見えないことになっています。
引用:文化デジタルライブラリー「人形浄瑠璃文楽」人形
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc26/ningyo/