• コラム
  • 【関西だより】イケフェス大阪 2024

    10月26日(土)・27日(日)の2日間、『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)』が開催されました。毎年秋の週末に、大阪の魅力ある建築を一斉に無料で公開する日本最大級の建築イベントです。

    10回目となる今年は、歴史ある建物や現代的なデザインの建物など、約170の施設が公開されました。一部は事前申し込みが必要ですが、当日自由に見学できる建物も多く、黄色の公式ガイドブックを片手に歩く方をあちらこちらで見かけました。


    今回見学した建物の一部をご紹介します。
     1.大阪市中央公会堂
     2.大阪証券取引所ビル
     3.芝川ビル
     4.日本基督教団 天満教会

    建築と特許(意匠)について


    【国指定重要文化財】 建築年:1918年(大正7年)

    株式仲買人の岩本栄之助氏の寄附をもとに建てられ、ネオ・ルネッサンス様式を基調とした、鉄骨煉瓦造り地上3階・地下1階建ての構造となっています。現在も重要文化財でありながら、誰でも貸室として利用できる貴重な施設です。

    大集会室・小集会室・中集会室・特別室、いずれも天井・柱・床の細部まで、素晴らしい意匠が施されています。今年は特別に、大集会室の天井のシャンデリアが降ろされ、間近で見学できるようになっていました。

    ◆大阪市中央公会堂 〒530-000 大阪市北区中之島1-1-27

    建築年:1935年(昭和10年)(1期)/2004年(2期:保存建替)

    大阪株式取引所の設立に尽力した功績を称え、ビル前には五代友厚の像があります。
    2004年ビル建替え時に、円形のエントランスホールの外観が残されました。高い天井の1階アトリウムは、縦長窓のアールデコ調のステンドグラスがとても美しく、キノコ型のランプが吊り下がっています。また床面は、色大理石で分銅秤の模様が描かれています。

    エレベータ扉は旧扉の意匠を引き継いでおり、イタリアのフィレンツェにあるサン・ジョバンニ礼拝堂のアンドレア・ピサーノ作・南扉に由来したデザインだそうです。

    ◆大阪証券取引所ビル 541-0041 大阪府大阪市中央区北浜1-8-16

    【国登録有形文化財】 建築年:1927年(昭和2年)

    船場の豪商である芝川又四郎氏によって建設されました。関東大震災を教訓に耐震・耐火性が考慮された鉄筋コンクリート造りで、外壁など随所に古代中南米風の装飾が施された地下1階から地上4階建てのビルです。

    階段の手すりには美しい曲線が施され、使い込まれた風合いが歴史を感じさせます。
    メイン通りの御堂筋を1本入った場所にあり、4階には開放的な屋上テラスが広がっています。

    ◆芝川ビル 〒541-0044 大阪市中央区伏見町3-3-3

    【国登録有形文化財】 建築年:1929年(昭和4年)/1959年(増改築) 

    ミルクホワイトを基調とした礼拝堂は、4階建ての教会堂の中の2階の講堂と3階のギャラリーで構成されています。建築家の中村鎮(まもる)氏が考案した「鎮ブロック工法」が採用され、礼拝堂の楕円アーチ梁をさらにアーチでくり抜く構造により、重量低減が図られ、軽快さを醸し出しています。

    正面右側のパイプオルガンは2021年に建造されたものですが、礼拝堂のアーチと一体化し、荘厳な音を聴くことができました。90年を超える建物の2階に、約7tの重量があるパイプオルガンを設置する際は床面や壁面の補強などに苦労をされたそうです。
    (写真では少し見づらいですが)パイプオルガンの左側面にある「星」は、ただの飾りではありません。パイプオルガンの演奏とどのような関係があるか、機会があればぜひご自身の目でご確認ください。

    ◆日本基督教団 天満教会 〒530-0045 大阪市北区天神西町4-15

    『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪について』

     生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)は、毎年秋の週末に、大阪の魅力ある建築を一斉に無料で公開する日本最大級の建築イベントです。
     長いときを刻んだ歴史的な建築から、斬新なデザインの現代建築まで、あの建築家の名作から、昭和の雰囲気を色濃く残す街場の喫茶店まで、大阪という都市の魅力を様々に物語る100を超える「生きた建築」が、一斉にその扉を開きます。

    *公開対象の建物リストなど、プログラムが閲覧できます。

    https://ikenchiku.jp/ikefes2024/

    建築分野では、構造や施工方法に関するもの、建築素材・材料に関するもの、情報技術(IT)を活用したシステムなど、多数の特許が出願されています。最近では、特許庁の特許出願技術動向調査のテーマに「パッシブ技術」(※)が取り上げられるなど、省エネ・環境に配慮した技術も注目されています。

    (※)令和5年度 特許出願技術動向調査報告書「パッシブZEH・ZEB」(要約PDF)

    ZEH(net Zero Energy House)・ZEB(net Zero Energy Building)の取組は、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」及び「経済財政運営と改革の基本方針 2022(骨太の方針)」で取り上げられているとおり、政府の重要課題として位置づけられており、技術開発競争の大幅な進展が期待される。
    特に、ZEH・ZEB の基準となる断熱性能等の建物の基本性能を向上させる設計手法に係る技術分野(以下、「パッシブ技術」という)は、技術開発競争が激しい分野の一つとなっている。
                    (特許出願技術動向調査報告書 第1章 調査目的 から抜粋)

    また令和元年の意匠法改正で、新たに「建築物」や「内装デザイン」が意匠の保護対象になりました。

    弊社は、建築・土木分野に関する特許調査の実績がございます。
    調査ご依頼が初めての方でも、お気軽にお問合せください。

    <調査実績>
    支持構造、遮音構造、気密構成部材、床下空調、温度制御方法、輸送システム、維持管理システム、など
    ガラス建材、耐震防火を目的とした建築材料、樹脂素材、など