ニュース・お知らせ『冒認出願を理由として特許無効となった事案例』

冒認出願を理由として特許無効となった事案例

カテゴリ:コラム投稿日:2019年6月18日

わたくしども調査会社がお客様からご依頼いただく調査の種類として、出願前の先行技術調査に次いで多いのが、他社の特許を無効にするための無効資料調査です。

 

一度登録になった特許を無効にできる要件は、特許法第123条第1項に次のように列挙されています。(ここではいわゆる付与後異議申立手続きである特許法第113条には触れないこととします)

 

一 その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。

二 その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。

三 その特許が条約に違反してされたとき。

四 その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。

五 外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。

六 その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。

七 特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。

八 その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第五項から第七項まで(第百二十条の五第九項又は第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、第百二十条の五第二項ただし書又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。

 

お客様の調査の目的は、問題となる他社特許を無効にすることですから、上記の一号から八号のどれであっても使える証拠が出てくればよいわけですが、わたくしども調査会社が探すのは、もっぱら二号の一部である、第二十九条、第二十九条の二、又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反していることを立証できる先行文献や先願特許、実用新案です。

 

ところで、わたくしどもが日ごろ探している先行文献や先願があるという理由以外の理由、たとえば、特許法第32条違反や上記の第六号に該当するいわゆる「冒認出願」であることを理由に無効にされた事案はどれくらいあるのかと思い、調べてみたところ興味深い事案が見つかりました。

 

案件は特許第4005609号です。

特許第4005609号

 

特許無効審判の審決(無効の請求不成立)を不服とした審決取消訴訟を経て最終的に無効とされた事案です。

 

共同出願にすべきところ一方の出願人が抜けていた、とか、サプライヤ側の発明なのに納入先企業に出願されてしまったなどの他の事案が「かわいく」思えるほどの手口です。

 

ここであまりあらすじを説明すると皆様のストーリーを追う楽しみが半減するので詳細は省きます。

 

事件の経緯は次の審決取消訴訟判決をご覧ください。

審決取消訴訟判決

 

その判決を受けた最終の審決は、J-PlatPatの「経過情報/経過記録」で見ることができます。

 

以上