• コラム
  • 鉛筆に関する特許(明治~昭和初期)

     新学期の季節です。新学期といえば、文房具。文房具と言えば、鉛筆。
    ということで、鉛筆に関する古い特許を探してみました。

     最初に日本の特許制度の歴史を見ると、明治18年(1885年)7月1日に専売特許条例が施行され、高橋是清が専売特許所長となったことが有名です。この専売特許条例は、昭和35年(1960年)4月1日に現在の特許法が施行されるまで続いています。
     そんな明治時代から始まった特許制度ですが、特許第1号から少し公報をめくっていくと、鉛筆に関する特許はすぐに出てきます。特許第6号「工夫釵(かんざし)」(図1)というものです。

    (図1)

     このかんざしは、筒状本体(ニ)の内側にバネ(リ)を内蔵して、鉛筆をバネ(リ)によって先端蓋方向に付勢することで、鉛筆の先端が筒状本体(ニ)から突出して筆記でき、さらに蓋(ハ)に小印(ロ)を備えるのでハンコも押せる、という構成のようです。
     また、その効果として「此釵ヲ用イルトキハ常ニ小印ト鉛筆ヲ携帯スルヲ以テ時ニ臨ンデ其用ヲ為サシムルノ便アリ」とあり、このかんざしを持ち歩けば所用が片づく、という謳い文句です。当時鉛筆は舶来品であり貴重品であったはずなので、この発明は鉛筆を日常的に使用できる富裕層をターゲットにしたものと思われます。

     ここでもう少し特許調査らしく、特許分類を調べてみます。
     鉛筆そのものに関するFIはB43K19/00(繰出さない鉛筆)のB43K19/02(鉛筆)が一番近いようです。J-PlatPatにて、公知日が1960年4月1日以前のものに絞ってB43K19/02を検索すると、80件ヒットしたので、この中からいくつかご紹介します

    実公昭06-008775(図2)

     鉛筆の製造方法に関する実用新案登録です。
     木目の揃った状態を指す柾目(まさめ)イ‘を持つ薄板イを重ねて一対の対向側板A,Bを作成し、対向側板ABの内側に鉛筆芯ハを入れて面合わせし、外側を鉛筆の丸形に切削するものです。柾目の薄板を使用することで鉛筆が削りやすくなるため児童用に好適、と記載されています。

    (図2)

    実公昭06-001468(図3)

     この実用新案はいわゆる紙巻鉛筆と呼ばれる、木ではなく紙で芯を覆った鉛筆に関するもので、巻紙2にミシン目4を形成することで、紙を剝がしやすくしています。紙巻鉛筆は現代でも、木軸とは相性の悪い顔料(クレヨン等)を使用したグリースペンシルに使われています。

    (図3)

    実公昭13-014991(図4)

     鉛筆の芯そのものがペンから分離して着脱可能な、シャープペンシル用の芯です。これはもうロケット鉛筆ですね。

    (図4)

       

     以上、明治~昭和初期に出願された鉛筆、に関する特許をご紹介しました。